くすり屋のトリビア : ダイエットの真実
投稿者: hangontan 投稿日時: 2006-11-17 17:10:37 (1009 ヒット)

肥満症の治療では総体重は減少させても、筋肉や骨の量は減少させないようにします。ダイエットは純粋に生化学の問題です。摂取した糖質は、グリコーゲンとして肝臓や、筋肉に貯蔵される。運動を始めるとまずクレアチンからATPが産生されるが、一分ももちません。次にグリコーゲンが分解され血中にグルコースが放出される。グルコースは解糖系で分解され、最終的に水と炭酸ガスになる。グリコーゲンの貯蔵量は肝臓に150g筋肉に75g程度なので、糖の生理的燃焼化は4kcal/gだから900kcal供給して枯渇してしまいます。次に蛋白質や脂質が消費される。脂質は効率のいいエネルギー源で生理的燃焼化は8。9kcal/g です。脂肪を100g消費しますのに890 kcalの仕事をしなければならない。これは体重60kgの男が4時間平地を歩くエネルギーです。山歩きだと2時間半。1kgの減量には10日間も続けなければならない。大変な努力が必要です。


ところで、脳細胞と血球類はエネルギー源としてブトウ糖のみに依存しています。減食し、糖分の摂取を制限すると、体は蛋白質を分解してアミノ酸から糖を新生します。そのため飢餓状態では、体脂肪の前に骨格の横紋肉が失われてしまう。筋肉は脂肪燃焼能力が高いエンジンでこれが失われると内臓脂肪のたまった体質になり、減食を止めるとリバンンドですぐ肥満になる。そこで健康を維持しますためダイエット中でも、糖分と蛋白質を一日最低1200kcalは摂取することが必要です。残り890kcalは運動で体脂肪を燃やすこととしますとようやく100 g減量し、毎日続けると、引き締まった体になり、確実に体重は減っていきます。
たっぷり食べて運動もせず、サプリメントを摂取しただけでらくらく減量ということは、生化学的にありえないというのが前提条件です。

―ダイエット補助食品―ダイエットに効くというギムネマ、ガルシニアなどの定番の成分を組み合わせた製品が多数出回っています。[ギムリンド・ネオ](資生堂ビューテイフーズ)はさらにグアバとトウガラシのエキスを加え効果をより確かにしたという。これらの成分を解析してみよう。

ギムネマはインド南部原産の薬草でガガイモ科のつる植物ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvestre)の葉から抽出したエキスです。インド南部を中心に、インドネシア、中国南西部など熱帯から亜熱帯地方に広く自生しています。インドでは古代インド伝統医学「アーユルヴェーダ」にも登場し、健胃、強壮、糖尿病治療などに用いられてきました。
主成分のギムネマ酸は味覚に働きかけ、砂糖の甘味を1〜2分で感じなくさせる作用があり、回復に1時間以上かかります。ギムネマ酸はトリテルペンを骨格にグルクロン酸が結合した配糖体(有機化合物の水酸基に糖がグルコシル結合した化合物)です。舌の味細胞の甘味受容体に働きかけるとされる。この働きから甘味を持つ食品への食欲減退効果があります。また小腸でも糖質(ブドウ糖)の吸収受容体に作用し吸収を抑制する働きがあると考えられる。そのためギムネマは肥満や糖尿病のコントロールに有効とされています。

ガラシニア・カンボジア(タマリンド)は(Garcinia cambogia)インドやスリランカなど、南アジアに自生しますオトギリソウ科の果樹で、「マンンゴスチン」の仲間です。常緑中高木(10〜15m)の植物で、5〜7月に黄色からやあ赤みがかった、大きさはオレンジくらいでかぼちゃのように縦に溝の在る実をつけます。インドやタイではカレーの香辛料や民間薬として使用されている。
果実には酸味があり、果皮に(−)ヒドロキシクエン酸[HCA]という柑橘類のクエン酸に似た成分が含まれている。乾燥したガルシニアの果皮には、HCAが10〜30%も含まれます。糖質から脂肪への変換を阻害する働きがある。この変換に関係するクエン酸と構造がよく似ていることから生まれる機能のようです。脳下垂体を刺激し、空腹を感じなくさせることでも知られます。Hoffman La RocheがHCAの使用特許をもっていたが1994年に切れ、他の会社が健康食品に使えるようになりました。

 トウガラシにはカプサイシンという辛味成分が含まれます。カプサイシンは生体のエネルギー代謝を促進し、糖質や脂肪を燃焼して分解するのを助ける。カプサイシンは中枢神経を刺激してアドレナリンの分泌を促進する結果、エネルギー代謝がたかまるという。特に腎臓周辺の内臓脂肪を減少させる効果がある。

 グアバは、熱帯アメリカを原産とする。この植物の葉に血糖値を下げる作用がある。ダイエットに効果があるか不明。
サラシア・レテキュラータはスリランカや南インド原産のツル性植物。インドの古代伝医学「アーリュヴェーダ」にもギムネマ・シルベスタと同様に登場し、糖尿病の治療薬などとして用いられてきました。サラシアの抽出液にはα-グルコシダーゼの阻害効果があるという研究が進んでいる。

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