「ドキュメント 山の突然死 」

柏澄子 著 ★★★ 山と渓谷社

『山と渓谷』に連載され、その後、書籍化された一冊。 山で起こった突然死、その事例を事故関係者への取材を通して、その原因に迫ろうとしている。 事故の模様が山行報告形式をとってドキュメントタッチで再現され、自分もその当事者と同行している気分にさせられる。と同時に、その事故が発生した時、自分だったらどう対処するだろうか、そんなことも案じながら読み進んだ。 山での突然死は遺体収容までに時間がかかるため、その引き金となった要因を特定するのは極めて難しい。今回示されたいくつかの事例でも、その時点においてそれが死に至るような前触れであったと見受けられる症状であったと特定できるものはみつからない。結果からみれば、そうだったのかもしれないと、推測できるに過ぎない。 容態が急変してからの処置が山では限界があり困難を極める。 しかし、少しばかりの天候の崩れ、わずかな体長の不具合をもって、その山行自体を中止するわけにもいくまい。それを重篤な事態の予兆と捉えるかどうかは、なかなか難しい。

「ドキュメント 山の突然死 」

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