「純白の証明」
森村誠一 著 ★★ 中央公論新社
中央官庁の課長補佐がビルから飛び降り自殺をした。課長補佐といえばノンキャリア組としてはそこが最後の行き着く場所。しかし、省内の生き字引と慕われ、職場はもとより出入り企業からも一目置かれていた彼には自殺に走る理由は見当たらない。 自殺か他殺かをめぐり、警察が捜査を進めていくなかで浮かんできたのが、自殺をした課長補佐が絡んだ山での遭難事故。登攀中の仲間の一人が転落し、宙吊り状態の彼はパーティーを救うため自らザイルを切断してしまう。 捜査の糸口をその事件に見出す棟居刑事。 そのパーティーのメンバーを捜査中に相次いで起きる山の死亡事故。そして、再びザイル切断による死亡事故が起きてしまう。 サスペンスものとしてはロジックが薄弱、社会派小説としては企業悪が描き切れておらず、山の本としては深みがない。いまいち乗りに欠ける作品だ。
「純白の証明」 |