「青春の雲海」

森村誠一 著 ★★ 中央公論新社

人生二毛作、三毛作。 人生をリセットするため、行方をくらまし、赤の他人に成りすまして暮らしてみたい。そんな願望は誰にでもあるのではないだろうか。今回の作品はそれが主題となっている。 山に行くといって、そのまま行方不明となってしまった本屋の主人。 その妻と、白馬から針ノ木への縦走路で棟居刑事が遭遇する。 本屋の主人とその会社の女性従業員との不倫逃避行。二人が転がり込んだ先は、これがまた人生二毛作、三毛作を地でいく人ばかりが住んでいるアパート。そこの住人は浅田次郎の小説に出てくるような、なんとも個性派揃いな連中ばかり。 外国要人のための特別供応担当女性まで登場し、主物語に絡んでくる。 数年前に起きた老婆殺人事件と今新たに起こった身元不明者の殺人事件の接点が次第に見えてくる。 棟居刑事が再び山に登る。 この作品もコメディなのだか、刑事ものなのだか、さっぱりわからない。題材やそちこちに散りばめたプロット、プロットはまぁまぁだと思うのだが、筋立てや伏線の張り方が安易すぎて深みと面白みに欠ける。浅田次郎ばりのユーモア仕立てにも程遠く、この作品にもがっかりさせられた。

「青春の雲海」  

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