「林檎の木の下で」
アリス・マンロー 著 ★★ 新潮社クレストブックス
先に読んだ「イラクサ」がよかったので、手にとったみたのだが・・・。 前作品ほど私の心に響くものはなかった。 自らのルーツを織り込んだ自伝的小説、というふれ込み、それはそうかもしれないが、だからどうなんだ、という印象。「事実は小説より奇なり」という例えがあるが、そんな奇想天外、波乱万丈な人生がごろごろしているわけではない。著者のルーツもやはり普通の人々の物語であった。その時代に起きたであろう極ありふれた人間模様。それを短編小説として、またそれらを連ねて、一つの作品としただけのはなし。事実を元にしているだけに、それに縛られるかっこうとなり、小説への広がり、創造性に難があるように思えた。それから比べると先に読んだ「イラクサ」の方が、単純に小説として入っていけただけに、おもしろみはあった。
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