「烏有比譚」
円城塔 著 ★★ 講談社
円城塔、五冊目。 初出/「群像」二〇〇八年五月号。 単行本化にあたり「注」を加筆しました。 とある。 まともに読めるのはその「注」ぐらいであり、「注」といいながら、本文を補筆しているといっていいくらいのボリュームはある。本文となると、部分部分は理解可能なところもあるにはあるが、全体としては支離滅裂。 本文が上段、「注」が下段というデザインになっているので、双方みくらべながら読み進むという妙な読み方になる。そういう読み方がおもしろいと言えなくもない。 円城塔の作品はこれで五冊読んだことになる。 だが、なかなか掴みどころがない作品ばかり。ネット上では熱烈なファンも見受けられるが、これら五冊を読んだかぎりでは、そういう彼らの言い分も理解できない、というのが率直な感想。だが、誰も書けないような、理解できないような、支離滅裂な小説を書けること、それはそれですごいこと”なのかもしれない。
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