「たまゆら」

あさのあつこ 著 ★★★★ 新潮社

読んでいて、舞台劇が目に浮かぶ。 幕が開くとそこには背景に雪の山が描かれ真ん中にいろりを切った一軒家。 そこに住まういわくありげな夫婦と訪問者。深く雪に閉ざされた中で時間がゆっくりと過ぎていく。だが、そこで語られる物語は愛する者への狂おしさと凄まじいまでの執着心。静かで凍えるほど冷たい雪の山とは対称的な激しく熱い独白。 山は登場人物に心の内を吐きださせ、人はもがきにもがいて山に挑もうとする。しかし、最後には雪山が全てを包みこんでしまう。そして人の心にも山にも静寂が訪れる。降り積もる雪の余韻を漂わせて幕が降りる。

「たまゆら」

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