「邂逅の森」
熊谷達也 著 ★★★★★ 文藝春秋
怒涛の一気読み5時間。熊谷達也ここにあり。 先に読んだ「相剋の森」とほぼ同時期に連載初出されている。方や地方日刊紙、方や文藝誌。しかも主題が絡み合っている。だが完成度、読み応えには雲泥の差がある。何で筆圧にこんなに差があるのか不思議でたまらない。 主題が絡んでいるというのは、「相剋の森」で登場した熊田集落のマタギと女性ライター双方共通のルーツがここに描かれているからだ。「漂白の牙」で重要な役割を果たした村田式銃や、短編集で「山背郷」の題材とされた越中富山の薬売りも脇役に登場して、「ウエンカムイの爪」以来のマタギ作品の集大成ともいえる。 熊谷達也得意の「狩り」の場面はこれまで最強の出来、主人公の織りなす人間模様も今までの作品とは一味違う。
さて、物語としてリンクしている三つの作品、時代背景的には古い順に、「邂逅の森」「ウエンカムイの爪」「相剋の森」となる。が、たまたま偶然なのだが、自分が読んだ順に読んでいくのが、驚きや気付きもあって、よいように思う。つまり、「相剋の森」「ウエンカムイの爪」「邂逅の森」とう順。 「邂逅の森」はその評判通り読み応え十分の作品だった。これで熊谷達也とはしばらくおさらばしようと思う。
「邂逅の森」 熊谷達也 著 ★★★★★ 文藝春秋 |