「南極点のピアピア動画」
野尻抱介 著 ★★★ ハヤカワ文庫
野尻抱介、二冊目は「大学読書人大賞 2013」に輝く本作品。 近頃の大学生に支持される、ウケル、作品とはどんなのだろうか、興味がわく。テンポが速く、軽いノリは先に読んだ「女子高生リフトオフ」と同様。荒唐無稽な筋立てだが、SFっぽさは一応クリアしている。 「ピアピア動画」はもちろんニコニコ動画のパクリ。ニコニコ動画のへヴィーユーザーでもある作者が、ニコニコ動画への賛辞も含めて書き上げたライトSF小説。ネット社会をごちゃごちゃした蘊蓄を並べたてて語るのではなく、魅力的なことの本質を捉えて、それをうまくSF小説に仕上げている。
ソフトフェアのオープン・ソース化は研究開発のテンポを飛躍的に向上させた革新的な手法で、ネット社会の恩恵を十二分に受けた分野の一つ。加えて、本作品ではオープン・ソース・ハードウエアも登場する。言われてみれば、自分が知らなかっただけのことなのかもしれないが、それもまるきし現実味がないわけではない。工作機械とは無縁の世界に生きている自分だが、ネットを使ったこういう手法は、自分の商売にも何かしら可能性があるのではないかと思わされた。 ピアピア動画から得られる資産を駆使して次から次へと嘘のように物語が展開していく様はまるでゲームの中を垣間見ているよう。そんなところも今の学生に支持される由縁なのかもしれない。
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