「容赦なく」

トム・クランシー 著 ★★★★★ 新潮文庫

本作品は三回目。今の自分の年齢からして、四回目を読むことはないだろう。 クラークことジョン・ケリーの若かりし頃の物語。数年ぶりに呼んだが、やっぱりおもしろかった。読み応え十分。若き日のジャック・ライアンもボルティモア市警のエメット・ライアン警部補の息子としてちらっとでている。 度重なる悲劇から立ち直るケリーに心が揺さぶられる。腕っ節が強く、頭も切れ、人間愛に富んだケリーは世の男性の象徴ともいえる。そんなケリーだけでも主役が張れるのに、ケリーのようなつわものがごろごろしている本家ジャック・ライアンシリーズはどれだけのものだったか。 物語の背景もてんこ盛り。ヴェトナム戦争、CIAとGRUのスパイ合戦、性暴力、麻薬問題、船乗りの矜持。そのどれにもケリーがかかわっているからすごいの一言。 トム・クランシーの作品は高水準の物語ばかりだが、この作品はとりわけ中身が濃い作品だと思う。

「容赦なく」

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