「悲しみのイレーヌ」

ピエール・ルメートル 著 ★★★ 文芸春秋

ネット上の評価にはかなりばらつきがある。 日本では「その女アレックス」が先に出され本書が二冊目に出版された。だが、本国では本書が先で「その女アレックス」がその次の物語。「その女アレックス」がおもしろかったので、本書を手に取ったのがほとんどではないかと思う。自分もそのうちの一人。 日本での「その女アレックス」に対する評価はかなり高いものが目立つ。それと比較しての二作品目という意識がはたらくのかもしれないが、酷評は多い。実存するサスペンス小説を模した連続殺人を入れ子にした物語の構成=トリックが安易で陳腐過ぎるというのが酷評の主な主張。ただただ残虐さと性暴力の異常さに辟易した、との意見もある。 たしかに、残虐さと性暴力に関しては、過剰にすぎるという感が否めない。「悲しみのイレーヌ」という邦題にも違和感がある。それらを差し引いたとしても、刑事ものの小説としては並み以上の作品でないかと思う。

「悲しみのイレーヌ」 

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