「情熱のシーラ」

マリーア・ドゥエニャス 著 ★★★ NHK出版

全世界で400万部の大ベストセラーになったという本作品。その実力のほどはいかに。 ナチスが台頭してきたころの、スペインとスペイン保護領のモロッコを舞台とする。そのころのスペインに関する情報は自分の中では全くなかった。枢軸側にいたのかそうでなかったのか、モロッコとはどんな国だったのか。そんな歴史の空白地帯を本作品は埋めてくれた。 内戦によって国がズタズタにされたこの頃スペインには、かつて世界の海をまたにかけた覇者の面影は露ほどもない。あるのは権力側とそうでないものとの悲惨な戦いがあるのみ。ナチスになびくのかイギリスに就くのかはっきりとせず混沌とした状況であった。 主人公シーラの破天荒な人生もスリリングでおもしろいが、この作品から伝わってくるのはそんなスペインとモロッコに住まう人々の危うくて綱渡り的な生き方だ。シーラはその一つの典型である、と見た。

「情熱のシーラ」

Loading