「ゴールデン街コーリング」
馳星周 著 ★★★★★ 角川書店
地元紙に紹介されていた一冊。すでに借り手がついているではと思ったが、ラッキーなことに書架に並んでいた。冒頭からぐいぐい引き込まれ、ボス缶2個飲み終える頃には読み終えていた。 「不夜城」に代表されるようなジェイムズ・エルロイ的なノワール世界は微塵もない。浅田次郎と石田依良を思わせるタッチはとても読みやすい。作品の中で主人公が、平井和正の作風が途中からガラっと変わって以降興味が薄れていった、という記述があるが、この作品を通してノワールから大きく方向転換した馳星周とダブって見えた。読みやすく大衆受けするのは本作品のようなハートウオーミングな物語なのだろうが、「不夜城」みたいな得体のしれないブラックな世界を作者に期待してしまうのは私だけではないと思う。 ともあれ、読者の多様性に作家の多面性がうまくマッチした良作なのは間違いなく、そのうち、映画かテレビドラマ(NHK)になるかもしれない。
「ゴールデン街コーリング」 |