「チャイナ・カード」
ジョン・アーリックマン 著 ★★★ 角川書店 上・下
1971年、突然のピンポン外交から始まったように見えた、米中の急接近。そして、翌年の米中の国交回復。世間的にはキッシンジャーの表裏にわたるネゴがあったとされるが、本作品は、米中の橋渡しになったもう一人の立役者を設定し、舞台の裏側をスリリングに描き出している。 文化大革命に表される国内の無法化とソ連の脅威にさらされている中国、方やアメリカは泥沼化したベトナム戦争からの撤退に腐心し、ソ連への優位性の確保が焦点となっていた。主人公は、米中双方の利益と国際情勢を鑑み、周恩来とニクソンを相手に巧みに動き回る。秘密裏に米中を行ったり来たりする主人公の波乱万丈の冒険譚を主軸に置きながら、恋多き主人公の心の動きもうまく絡ませている。
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