「無垢の博物館」
オルハン・パムク 著 ★★★★★ 早川書房 上・下
ネット上では概ね好評だが、中には★一つという手厳しいものも見うけられる。 それほど読み手によって感じ方が異なる作品だということだろう。私自身、ハテナ?と思いながらもページをめくっていったのも事実である。 小説の醍醐味は作者が紡ぎだす虚構の世界にどれだけ読み手が入り込めるかにあると思うが、その点、この作品には読み手が許容する範囲をはみ出しすぎる、言葉は適切ではないかもしれないが、あまりにも荒唐無稽、拙速、刹那的なストーリーが徹頭徹尾貫かれている。それを、どう捉えるか、捉えられるかが、評価の分かれ道となるのであろう。 しかし、他のどの作品にも共通している、「トルコ」を描き出すという点では、この作品もその例外ではない。今回の主題となっている「恋」の描き方は多少変則的ではあるが、トルコという国のリアリズムをうまくはめ込んだ虚構の世界に浸ることが出来た。
「無垢の博物館」 |