「ジョン・マン」全7巻

 山本一力 著 ★★★★★ 講談社

山本一力は初めてだ。
心温まる伝記小説というのが第一印象、たぶんこれを手にした誰もが同じ思いに浸るのではないかと思う。なんとなく浅田次郎を彷彿させる書きぶりだが、それよりもっと平易な文章使い。単行本の文字も大きく、行間も広く、それらも手伝ってとても読みやすい。これだけの長編でありながら、最初から最後まで筆圧が変わらず、つまずきも感じない作品はそんなにはない。たぶん、何度も何度も推敲を重ねているのだと思う。山本一力は「人生とは、推敲の繰り返しだと思う」と語っており、作品にそれが十二分に現れている。
物語は第7巻「邂逅編」(2019年発行)で突然終わっている、というか止まっている。さて、これから、という場面である。ここまでも波乱万丈の物語であったが、主人公のこれからの行く先を語るとき、それはまだまだ序章にしかすぎない。奥付にも「シリーズ第7弾」とある。続編を望む声は大きいが、その情報は皆無。ただ、初出の小説現代2018年03月号には「金鉱編」が掲載されているらしく、それに依るしか現時点(2025年6月)では手立てはなさそう。しかし、その「金鉱編」とて、ジョン・マンのその後の人生を考えれば、一断片にしかすぎないのだが・・・

「ジョン・マン」全7巻 山本一力 著 ★★★★★ 講談社


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