「最果ての子供たち」

ニコラ・マチュー 著 ★★★ 早川書房

2018年ゴンクール賞をとったということで手に取った。

邦訳出版間もないせいもあってか、ネット上のレビューは少ない。あったとしても、極めて短いコメントで終わっている。1990年代、フランスの少年たちの実生活を描いた年代記。それがあまりにも荒廃して、暴力的で、アウトローすぎて、それまで漠然とあったフランスのイメージからかけ離れているため、リアルなのだが、現実とは思えず、どう自分の中で整理してよいのかわからない。そのため、感想文もまとまらないのだと思う。

アメリカの「ラストベルト」の荒廃ぶりについては度々小説のモチーフとして描かれていて、なんとなくイメージは出来上がっていたが、本作品はフランスの「ラストベルト」ともいえる地方を題材としている。最下層とまではいかなくても、それよりは少しはましなクラスの人々が暮らす街。そもそも、フランスにそんな地域があったこと自体、自分の中で欠落していた。なので、唐突にそれを知らされたとき、そうでないフランスとのギャップが激しすぎて、「作り話」に思えてしまう。本作品がフランスで最高の賞を得たのは、その黒歴史と裏社会を正面から捉えようとした結果だと思う。

「最果ての子供たち」ニコラ・マチュー 著 ★★★ 早川書房

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