「徳川慶喜」全6巻 

山岡荘八 著 ★★★★ 講談社

幕末探求の一冊。
これまでに読んで来たどの解説書、小説よりも幕末に入っていけたような気がする。もっとも、これまで手にしてきた小説、書籍がいくばくかの素地となっているには違いないだろうけど。

山岡荘八は「徳川家康」「伊達政宗」に次いで三作目。「徳川家康」はまるで富士山の頂上に家康があるかのような作品づくりで、重厚で緻密そしてなによりわかりやすい文章が、超長編を最後まで飽きさせずに読ませてくれた。本作品もその系統にある。 ペリーが浦賀に来てからわずか十数年で、日本は天と地がひっくり返るような大転換に舵を切った。それも、押し寄せる列強各国に蹂躙分断されることなく、ゆっくりと近代国家へと歩み出すことに成功した。それは、とりもなおさず日本人の英知の結集の結果に他ならない。そこには様々な人物が登場し、どろどろの器の中で有機的に蠢き合って、そこから絞り出されたほんの1ミリにも満たない細い線の綱渡りであたかもしれない。がしかし、そこに慶喜がいたればこそ成し得たと言ってもよいだろう。一言に「幕末」「明治維新」というが、その動乱期を慶喜の目から描いてみせた秀作だ。

「徳川慶喜」全6巻 山岡荘八 著 ★★★★ 講談社

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