「連」

宮尾登美子 著 ★★ 宮尾登美子全集 第五巻 朝日新聞社

昭和37年、処女作にして婦人公論女流新人賞を受賞。この年直木賞の候補作にもあがっていたが、もれた。昭和51年では『陽暉楼』で再び候補に上がるが、これも、残念がながら選にもれてしまう。ようやく直木賞をとったのは昭和53年の『一弦の琴』である。実にまる17年もかかっている。しかし昭和48年には『櫂』で太宰治賞を受賞しており、ことのきすでに宮尾登美子の『文』は確立されていた。 舞台は大阪、たぐいまれな才能で珠玉の真珠の連を紡ぎ出す女性が主人公。彼女の繊細な感覚から生み出された連は世界中の注目の的となる。真珠の声を聞き、真珠の気持ちになって、表面の輝きだけでなく、内面からにじみ出る微妙な綾までも見通してしまう主人公。 『櫂』からみればかなり荒削りだが、宮尾文学の兆しは見てとれる。

「連」

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