「ブラック・サンデー」

トマス・ハリス 著 ★★★★ 新潮文庫

1975年に書かれているこの本は、すでにアラブとアメリカとの悲運を捉えていた。 アメリカのイスラエルへの武器供与に対するパレスチナゲリラの憎悪。 テロの主体はパレスチナゲリラからイスラム原理主義過激派へと移っていく。 9.11の惨劇はなにも突然に降って湧いたものではないことをあらためて感じる。 パレスチナゲリラと手を結ぶのは、ことのきすでに暗躍していた悪名高きカダフィ大佐、そしてベトナム戦争で捕虜となった元海軍将校。対するはパレスチナゲリラを執念深く追ってアメリカにやって来たモサドの諜報部員。元海軍将校が企てたのは飛行船による満員のフットボール会場での大量無差別殺人。 物語は緻密でストーリー的には破綻はない。役者も丁寧に描き込まれている。場面作りも申し分ない。作り方的には時代を感じさせるが、昨今流行りのジェットコースター・サスペンスとは違って、ひたひたと迫りくる緊張感がたまらない。

「ブラック・サンデー」

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