「武士道」シリーズ 4部作

誉田哲也 著 ★★★★★★★ 文藝春秋

久しぶりの星七つ。作品ごとに題名が異なるが、続き物なのでまとめて感想を書くことにした。4作品とも、紅白二本のしおり紐がついている。剣道の試合のとき、背中に付ける「タスキ」を模したもの。私もよく覚えている、試合の前に仲間や後輩や誰かが背中の胴紐にタスキを結んでくれる、あの感触。剣道において紅白のタスキは特別な意味を持つ。

「武士道 シックスティーン」が書かれたのが2005年、そして最後の「ジェネレーション」が出たのが2015年。この間、少女たちの成長に沿って「セブンティーン」「エイティーン」が出版されている。 これは漫画だ、絵のない漫画。剣道女子の中学から高校、大学そして卒業した後までを描く青春物語。何も考えなくてよい、ただただ彼女たちの心の内を辿るだけでいい。池井戸潤の「半沢直樹」が銀行マンのバイブルとなったように、おそらくこの作品は女子男子を問わず剣道少年のバイブルとなっているのではないかと推察する。そう思うのはもう老人の域に入った自分だけなのだろうか。現役剣道女子の声を聴いてみたい。 それぞれの巻末の文章が各々の物語を象徴しているので添付しておこう。

「武士道 シックスティーン」 大きな拍手を浴びながら、お互いに構え、剣先を向けあう。 この場所で再びめぐり合い、この相手と戦う、喜び。 最高の舞台で迎えた、最高の相手。 この時代を共に生きる、二人といない、好敵手。 さあ、始めよう。 わしたちの戦いを、わたしたちの時代を。 これが新しい、武士道の時代(研究中)の、幕開けになるー。 「

武士道 セブンティーン」 わたしたちは、それぞれ別の道を歩み始めた。 でもそれは、同じ大きな道の、右端と左端なのだと思う。 その道の名は、武士道。 わたしたちが選んだ道。 わたしたちが進むべき道。 果てしなく続く、真っ直ぐな道。 そしてまたいつか、共に進むべき道―。

「武士道 エイティーン」 わたしたちは、もう迷わない。 この道をゆくと、決めたのだから。 急な下り坂も、下り坂もあるだろう。 枝分かれも、曲がり角もあるだろう。 でも、そんなときは思い出そう。 あの人も、きっと同じように、険しい道を歩み続けているのだろうと。 そう。すべての道は、この武士道に通じているー。

「武士道 ジェネレーション」 同じこの道を、わたしたちは歩んできた。 かけがえのない出会いがあった。 心震えるような学びが、骨身を削るような試練があった。 しかし今、来た道を振り返ることはしない。 命ある限り、わしたちは進まねばならない。 この武士道を、続く者たちに、伝えなければならないー。

「武士道」シリーズ 4部作

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