「007 白紙委任状」

ジェフリー・ディーヴァー 著 ★★★ 文藝春秋

本年の読み納めはジェームズ・ボンド。 「ボンドはふだんは紐靴は履かない、例外はコンバットブーツが必要なときと、紐の結びかたによって仲間のエージェントに暗黙のメッセージを伝えるときに限られる」 うーん、なるほど。 ジェフリー・ディーヴァーが描くボンドはいかに、おそらくジェフリー・ディーヴァーファンならばほとんどの人がそう思ってこの作品を手にとったのではないだろうか。

結論からいうと、やはりこれまでのリンカーン・ライムシリーズの手法をそのままボンドに踏襲した作品となっている。「1953年にイワン・フレミングが生み出した世界一有名なキャラクターを、数百万の読者を失望させることなく現代に蘇らせること」は並大抵のことではない。 冒頭、ボンドの危機一髪から始まるアクションシーンは、映画のそれを彷彿させる。あの有名な出だしのスクリーン音楽が聞こえてきそう。また、セルビアからイギリス、そして南アフリカとめまぐるしく舞台が変わるのもボンド映画のお定まり。もちろんボンドガールも登場する。 まぁ、ジェフリー・ディーヴァーが手掛けただけあって、一応のレベルには達している。しかし、リンカーン・ライムシリーズのパターンが読めているだけに、斬新さに欠ける印象。切れ味という点でも、もうちょっと。もっと違った筆致のボンドが読みたかった。

「007 白紙委任状」

Loading