「クライミング・フリー」

リン・ヒル 著 ★★★★★ 光文社

女性クライマーには美人が多い。 フリークライミングで多くの偉業を成し遂げその伝説となった彼女。そして、女性クライマー美人説を象徴するのもこの本の筆者であるリン・ヒルである。 表紙を飾る写真をみれば、クライミングに興味があろうとなかろうと誰もがこの本を手にとってしまうだろう。その精悍ともいえる整った顔つきと、岩壁の次の一手を見つめ、獲物を見据えるヒョウのような眼差し。そして岩と一体化した手と足、研ぎすまされた体。彼女のまわりの空間までもが張り詰めたクライミングの一部であるかのように彼女を包む。そして、巻頭に並ぶ究極のクライミングシーンを写した写真の数々、それらがこの本の内容以上のものを物語っている。 彼女の初めてのクライミングとの出逢いと、そして、その後フリークライミング界において数々の金字塔を打ち立てることになる、その彼女のフリークライミングの人生を綴っている。とともに、自らがその流れの中にあったフリークライミングの黎明期から現在に至るまでのクライミング技術とクライミングに対する捉え方の変遷もうまく描かれている。 なにより重要なことは、彼女には常によきクライミングパートナーがいて、大勢の仲間達がいたことだ。彼らとの出逢いがなければ、いくら才能のある彼女でもあれだけの偉業は成し遂げられなかったであろう。フリークライミングが本当に好きだということ、そして仲間達への賛辞と感謝の気持ち、そういう思いも本書からひしひしと伝わってくる。

「クライミング・フリー」

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