「デスペレーション」 

スティーヴン・キング 著 ★★ 新潮社

キングの本すべてが面白いとは限らない。邪悪なものの位置付けがあいまい。それに相対して、善である少年の描き方にも無理がある。出だしから序盤まではなかなかよかったのだが、中盤以降冗長的な感がぬぐえなくもない。 本書でも多人物同時進行型的手法が用いられている。であるから長編になりがち。作者がそれを意識しようとしまいが、それは推理小説を含めた現代の小説の一つのありかたであるようだ。ただ単純な勧善懲悪のホラーよりも、より複雑で、腹一杯になるような物語を今の読者は求めているのだと思う。今回キングはそれに応えようとしたのかもしれない。プロット、プロットの組み合わせ方は悪くはないと思うのだが、全体を通して焦点がわずかに合っていないように思える。

「デスペレーション」 

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