「ダブル・ファンタジー」
村山由佳 著 ★★★★ 文藝春秋
この小説のほとんどは、濡れ場(ちょっと古いか)と会話から成り立っている。 「花酔い」でもたまげたが、今度のはもっと刺激が強かった。 主人公の高遠ナツメは脚本家。冒頭からいきなりデリバリー君との絡み合いで始まる。そして、起承転結を絵で描いたような「承」。舞台の演出家と交わされるメールのやり取りが秀逸。ワクワクドキドキ、ぐぐっと引き込まれていく。あとはなんとなく惰性のような気もしないでもない、それくらいこのメールのやり取りはスリルがあった。 村山由佳の作品がおもしろいのは、女性が描くエロ小説という側面が強いが、それだけではないのは読んでみればすぐわかる。まず文章に気負いがない、日本語がしっかりしている、奇をてらったストーリー展開もない、会話が実に生き生きとしている、そしてその会話、物語ともに筋道が通っている。その会話、その行為にはwhyがあり、doがある。しかし、このての小説は、読者の年代層によって捉え方に大きな差があるのではないだろうか。そんな気がする。もっとも、オジサン組みに入る小生には十分満足のいく作品だった。 ネット上の書評には女性からの投稿も多く、主人公の生き方を支持する内容のものがけっこうあったのは意外だった。どちらかといえば、こういう濡れ場オンリーの小説は女性にはネガティヴに受け止められると思っていたので。
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