「星と嵐」

レビュファ 著 ★★★ 白水社

山を始めて間もなく買って、それから何度も読んだ本。 私にとって「星と嵐」の山行きは遠い過去のものとなってしまった。 黎明期の登攀紀行のバイブルとも言える本書。登攀の一挙一動はもとより、登攀に臨む作者の心模様も素直に飾りけのない文章で綴られている。 山の征服はまず登りやすいルートを見いだすことから始まり、あらかたの未登峰が登りつくされてしまうと、次はより困難なルートからの登頂に目がいくようになる。必然的に登山形態も側壁の登攀が主体なものへと変化していく。それはより過酷な試練を登山者に課すことになり、自然の脅威のもと多くの挑戦者が散っていく結果にもつながった。しかし、その厳しい試練に耐えて成し得た登攀は、挑戦者により多くの達成感、充足感と喜びを与えることになる。 本書には六つのヨーロッパアルプスの名だたる北壁の登攀紀行が綴られている。レビュファはその一つ一つの登攀の模様を唄うかのように語り、あえて困難なルートに挑むことの登山者としての性を見事に表現している。 いま自らの登山の限界を決めつけてしまっている私にとっては、ちょっぴり青春のしょっぱさを思い起こさせてくれるもする。

「星と嵐」

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