「反魂丹の文化史(越中富山の薬売り)」
玉川信明 著 ★★★★★ 社会評論社
どうせこの手の本は通り一遍の上辺だけのことを書いているんだろうと思っていたが、読み始めてすぐその考えは改めさせられることになった。
本書は作者の『アウトロー烈伝』シリーズの中の一冊なのだが、売薬(この呼び方を嫌う業者さんもあるようだが、筆者は敬愛をこめてそう称している)をそのアウトローとして捉えている。いわく「自由は固定されない、移動こそが原理だ」「エンターテイメント即アウトローイズムなのだ」そういう意味では、我々売薬はまさしく自由と旅を享受して商売をしているといえる。
「旅行というのと旅というのとは、まったく違うことと考えていただきたい。土地の人と話し合いをし、土地の人と遊び、あるいは助け合ってくるような感じをつくって行くのが、旅なんですね」これこそ我々売薬が歩んできた道だし、これからも永遠と続いていく道筋であろう。圧巻は巻末に記された膨大な参考文献の数々。この本はそこから絞り出されたエキスのようなもの。読み物としても芯が通っているし、資料として読んでもわかり易い。至玉の一冊といっても過言ではないだろう。