「漂泊の牙」

熊谷達也 著 ★★★ 集英社

熊谷達也、初めての一冊。 もっとハードボイルド的な作品かと思っていたが、そうでもなかった。 そこにあるのは、雪、雪、雪そしてまた雪。ニホンオオカミとサンカをモチーフとしたミステリー仕立ての作品。巻末に添えられている参考文献の多さに驚く。その数々から著者のバックグラウンドがうかがい知れる。 絶滅したとされているニホンオオカミをいかに現代に引っぱり込むか、そこが本作品の興味の的。雪山で繰り広げられる追跡劇にページをめくる手が進む。ちょっと遊びが過ぎるのではと思わせられる筋立てもあるが、そこはすれすれの線でそうならずに済んでいる。 新田次郎文学賞を獲った作品だけのことはある。

「漂泊の牙」 熊谷達也 著 ★★★ 集英社

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