「血涙」(新楊家将)
北方謙三 著 ★★★★★ PHP研究所
題名の通り、血の涙というものがあるのならば、この物語はまさしくそれであろう。 『大水滸伝』『楊家将』ともに、三国志や項羽と劉邦の物語のような覇権を争う英傑の物語ではなく、そこに生きる武将の目から見た国の在り方を問うている。それが『楊家将』ではきわだっていて、武門という宿命を背負った英傑の生き様が描かれている。 「楊家将」で無念の涙をのんだ「楊家」が再び宋の先鋒として遼と対峙する。たとえ「死に兵」とわかっていても、戦にしか生きる糧をみいだせない男たちの物語。それを男の美学とでもいうのだろうか。前作で楊業は無念の涙をのんだが、今回はその息子たちが血の涙を流す。
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