「恋」
小池真理子 著 ★★★ 早川書房
1970年から1972年が舞台の恋物語。以前から読んでみたかったのだが、なかなか手に入らず、ようやく古書店で百円の良書を見つけた。 「恋」というには官能的でミステリアスな内容だ。せつない「恋」とはおよそ縁遠い。「秘密」と題してもよかったろうに、しかし、「恋」ではなくてはならなかった。 主人公が癌で亡くなる間際に、ルポライターに「これだけは秘密にしておいて」と語った、殺人という形で終わりに至ったすさまじい「恋」の話。 書評では連合赤軍の浅間山荘事件との関連性について触れられているものが多い。実際、物語りにもそれが伏線として描かれているし、主人公と学生運動との関わりも描かれている。 しかし、自分の中では「恋」のミステリアスな部分とは別のものという感がある。主題の「恋」とは別の話という感じが頭から離れない。また、それ自体でもりっぱな作品となり得る。 この本は二つの話を融合させた物語との印象が残る。
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