「高野聖」
泉鏡花 著 ★★★ 日本の文学 第四巻 中央公論社
前に読んだ「黒百合」よりは面白く感じた。文体や作風に慣れたせいもあるのかもしれない。
高野山に籍を置く高僧によって語られる怪しい物語。飛騨から信州へと向かう峠路で魔界へと導かれるも、無事生還する。たまたま道連れとなった旅人にその体験を言って聞かせる。その上人の語り口が微に入り細に入り、いかにも真実味を帯び、おどろおどろしい世界に引き込まれる。泉鏡花の真骨頂といったところなのだろう。
この作品は1900年に発表され、古典となっているが、今読んでも、手法などはいくらか古臭さも感じられるが、十分楽しめる。「黒百合」ほどではないが、富山とはちっとは縁がある。僧侶と旅路ですれ違った富山売薬、反魂丹売りは、魔界で色気にうつつを抜かし猿にされてしまう、という哀しい話なのだが。
「高野聖」泉鏡花 著 ★★★ 日本の文学 第四巻 中央公論社 |