「ミドルセックス」
ジェフリー・ユージェニデス ★★★ 早川書房
2003年ピューリツアー賞受賞作。「ミドルセックス」直訳すれば「中間の性」ということになるのか。文章中には「インターセックス」という言葉も出てくる。中間の性という言い回しはとても曖昧。早い話が、女性として生まれ、女性として育てられ、成長期のある時期に男性的性徴が現れ、自分が純然たる女性ではないことに気付かされた男性の物語。医学的には5α還元酵素欠損症性。性がテーマであるから、それなりの場面が出てくるが、全体を通してユーモアとペーソスの効いたタッチが漂っているため、官能的なイメージはあまり感じさせない。 テーマとしてはとても重いはずなのに、それをさらりと描きだしている。まるでエーゲ海の風が吹いているかのようだ。
アメリカに渡ったギリシャ系トルコ人の三世代に渡るそれぞれの青春物語と数奇な運命も十分に読みごたえがある。それだけで一つの作品にしてもほどほどの賞は獲れるであろう。この二つテーマの絡み具合が絶妙で、うどんとだし、あるいは、おでんとそのだし汁のような関係。それぞれが一級品でありながら互いを引き立てる役目を担っている。これが両性具有者の苦難と悲哀を謳っただけの物語であったなら、これほど芳醇で面白みのある作品に仕上がらなかったはず。さすがピューリツアー賞受賞を獲っただけのことはある。
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