「青春の十字架」
森村誠一 著 ★★ 中央公論新社
いかにも森村誠一の作品にありそうな題名。 「純白の証明」「青春の雲海」につづく山岳三部作の最終巻、というのだが。 これまで読んだ二作品もそうだったが、この作品も中身がまったくない。それどころか、三部作の中では最低の作品となってしまった。この作品からくらべると、最初に出された「純白の証明」がまだましと思える出来。 唯一の読みどころといえるのは「著者あとがき」くらい。これだけは森村誠一の意志が感じられる。 「青春の幻影を山岳ミステリーに具象化させたかった」と森村誠一は言っている。 その意味合いはなんとなくわかるのだが、作品としてはいずれも低レベルに終わっている。 もっと、しっかりとした山岳小説を彼には期待していたのに。 「エンドレスピーク」を頂点に、森村誠一の山は終わってしまった。
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