「赤朽葉家の伝説」
桜庭一樹 著 ★★★★★ 東京創元社
桜庭一樹がどんな作家なのか知らずに手に取った一冊。 真っ赤に色付いた葉っぱで全面を覆われた表紙とユニークな題名が目にとまった。ブックデザインも重要な購買の動機付けとなる良い例であろう。 鳥取の架空の村、紅緑村が舞台。 千里眼の山だしの娘、万葉が赤朽葉家に嫁ぐところから話は始まる。万葉とその子供らを中心とした、赤朽葉家の年代記。時代がちょうど小生が育った昭和と重なりあい、そのときの世相がリアリスティックによみがえる。 赤朽葉家にまつわる荒唐無稽な挿話が、その時々の時代背景と妙にうまく絡み合って、不思議な空間を生み出している。 現実ともファンタジーともつかない世界。今年になって読んで衝撃を受けたガルシア・マルケスの「百年の孤独」もそうだった。このような手法を「マジック・リアリズム」というのだそうだ。なかなか的を得た表現ではある。 他の作品も手にとって、桜庭一樹にハマってみたいと思う。 第60回日本推理作家協会賞
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