「製鉄天使」
桜庭一樹 著 ★★★ 東京創元社
「赤朽葉家の伝説」からスピン・オフしてできた作品。 はっきり言って、これはマンガだ。 主人公は赤緑豆小豆、鳥取の赤珠村にある製鉄会社の社長の長女。 十二歳になって中学に入るやいなや、小豆はバイクのけつにスミレッ子を乗せて田舎の道路をぱらりら、ぱらりらと駆け抜ける。“鉄女”小豆はレディース「製鉄天使」の初代総長となって、ガールズ達を従え、鳥取、岡山、広島、山口と制覇してく。 あいかわらず荒唐無稽なストーリーだが(今回はハチャメチャ過ぎ)、1970年代からの時代背景と世相を絡ませ、少女たちの夢物語を通して、一つの時代を切り取っている。バイクに跨り夢に向かって突き進む彼女達。しかし、その純粋さはガラスのような脆さを秘めている。そこら辺もうまく組み込んで、ただのハチャメチャコミックではない青春群像としている。 少女たちが吐く台詞が本書の読みどころの一つ。しびれるぜぇ。 『真っ赤に燃えよう、オンナ道!』 『路上に生き、路肩に死す、それがオンナの生き様さぁ!』 『あたしら、ハイウエィに恋してる!純情咲かせにゃ、十三歳が泣くぜ!』 『走るんだっ、赤緑豆小豆。時を追いこすように。ハイウエィで風になれっ。それがおまえの使命だぜよっ』 『あたし、あと二年とちょっと。十五の春まで遊び倒すの、小豆ちゃんとなら地獄まで行くよ。十五の春に笑ってお別れしよう。それまで一緒に遊ぼうよ。明日死んでもいいくらいに毎日、無茶しよう。ね、いいって言ってちょー?』
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