「ジャンキー・ジャンクション」

谷甲州 著 ★★ ハヤカワ文庫

全編が山の話。いわくありげな一人の男によって寄せ集められた即席の隊が山に挑む。何か事件が起こりそうな出だしであったが、物語的にはそうでもない。山登りのタクティクスに関しては忠実に描かれているので、その辺は楽しめる。核心は主人公にときよりおそいかかるデジャブ現象がはたして彼らの山登りとどうリンクしてくるのか、というところだろう。だが、それは細い支尾根に留まって、太い尾根とはならなかったようだ。山をやっているものなら誰もが抱くであろう、「夢想」=「こんな場面が来たらどうしよう」、という想いを断片的に書きとどめた、そんな本となっている。ごく浅い夢物語である。

「ジャンキー・ジャンクション」

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