「外交敗戦」
手嶋龍一 著 ★★★ 新潮文庫
先に読んだ『ウルトラ・ダラー』が今一だっただけに、今度もあまり期待しないで読み始めた。が、しかし、この本は読みごたえがあった。さすが第一級のジャーナリスト、情報収集と分析能力はピカリと光るものがある。前作から判断してフィクションの書き手としては、B級以下と言わざるを得なかったが、時代の断片を克明に暴き出してくれた本書からは、A級ノンフィクション作家に価すること十分である。 対岸の出来事だと多くの人思っていた湾岸戦争だが、それは日本にとって敗北だったと言わしめた。その根拠が本書に記されている。戦争に参加できない日本に突き尽きられた財政負担、130億ドル。これを巡って、日米内外での息詰まるやりとりが事細かく記述されている。当時国会で議論されたことの裏に何があったのか。お互いに行き来する外交官、政府首脳等のそのわけは。その一つ一つに本当に深い意味があったことを今知った。報道されていることの一面だけでは読み取れない真の外交というものを教えてくれた。小生の湾岸戦争に対する認識は本書によって大きく変えられた。感謝したい。
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