「ゴールド・フィンチ」

ドナ・タート ★★★★★ 河出書房新社 全4巻

ピュリッツアー賞というのは報道、ジャーナリズム関係だけと思っていたが、小説のようにノンフィクション部門があるということをこの作品で知った。 原題も「The Goldfinch」。直訳すると「ごしきひわ」という鳥の名前だ。その「ごしきひわ」が描かれた絵が展示してある美術館が爆破テロにあう、という場面が物語の発端。 語り手はその爆破に巻き込まれた少年。ひとくくりにして言えば、その少年の成長譚。印象は「人生万事塞翁が馬」。語り口は軽妙で、個人的には「ライ麦畑でつかまえて」を彷彿させる。ディケンズの香りがすると評するむきもあるが、ディケンズをまだ読んだことがないので、なんとも言えない。 また、物語のテンポのよさ、予想がつかない展開もさることながら、心理状況やしぐさに至る一挙一動の細やかな描写がこの作品では重きをなしているように思う。自分が知っているポピュラーな楽曲や小説、最近テレビでみた「ビル・アンド・セバスチャン」という映画などが少年の生活の中で語られ、私が生きてきた空間と同調している感覚を覚えた。 非常に長い作品だが、3巻目に入ると物語が一気に加速し始め、そのまま終盤までもつれこむ。 最近手にする本は自分より若い作者、翻訳者が多くなり、歳をくったことを実感する。

「ゴールド・フィンチ」

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