源治郎尾根と剱尾根 1989/5/1-5
同行者 YとS
5/1 雪 室堂~源治郎尾根S字状ルンゼ
御前乗越しから剱沢を下り、源治郎尾根へと向かう。取り付きは尾根の平蔵谷側に見えてくる顕著なS字状ルンゼ。雪が舞う中、ルンゼを詰めるが、次第に雪が激しくなり、台地状の地形にスペースを見つけてテン場とする。
5/2 晴れ
源治郎尾根~長次郎のコル
昨日とはうって変わっての上天気、稜線に出てから新雪のナイフリッジを行くスリルがたまらなかった。だが、この日、カメラのフィルムを入れ忘れその時の写真がない。長次郎のコルにてテン場る。
5/3 晴れのち雷 長次郎のコル~池ノ谷~剱尾根R10~門の手前
Yはここから別山尾根経由で下山していった。 Sと池ノ谷を下って、剱尾根の取り付きR10を目指す。似たようなルンゼがいくつか出てくるがR10はかなり下ったところにあり、雪もたっぷりついた傾斜も緩やかな幅の広いルンゼだった。コルCからは人工を使ったトラバース気味のピッチも出てくる。そして、いよいよ核心の門。 最初の垂壁を乗越せば氷の着いたランぺ状のフェースに出るのだが、その垂壁の出口で時間をくってしまった。ピンさえあれば思い切って乗越せるのだが、それが無いために思い切ったムーヴができない。あれやこれや考えているうちに、しびれを切らせたSから声がかかり、今日の行動を打ち切った。 門の手前の雪面を整地してツエルトをかぶってビバーク体勢に入った。直後にすさまじい雷が鳴り響き、天候が急転した。
5/4 晴れ 門の手前~剱尾根の頭~長次郎のコルのベース
ツエルトから出てみると、ド快晴の澄んだ空。ハーネスも気分も引き締めて門の攻略にかかる。昨日手こずった壁の出口、雪を払ってみると、そこにハーケンが打ってあった。昨日みつからなかったのが不思議なくらい。これで勇気百倍、そのハーケンにランナーをとるとなんなく壁を乗越すことができた。あとは凍ったフェースをダブルアックスで進む。 門を超えるとドームまで一登り。池ノ谷のど真ん中にあるその場所に立ったその時の感動は筆舌に尽くしがたい。核心部を超えた安堵感と充足感に浸りながら、残りの尾根を行く。剱尾根の頭、そして長次郎の頭を踏んでベースに戻った。
5/5 晴れ 長次郎のコルのベース~早月尾根~馬場島
フィナーレは剱岳本峰から早月尾根を下る。馬場島に無事下山したときは感無量であった。一つ自分の中の何かがはじけたような気がした。
源治郎尾根と剱尾根 1989/5/1-5 |