「彼女を見守る」

 ジャン・バティスト・アンドレア 著 ★★★★早川書房

「彼女」とはいったい誰なんだろう、それに気づくのは中盤以降。冒頭から序盤にかけて、いったい何を書いているのか、どんな場面なのかなかなか見えてこない。時系列や場面が行った入り来たりするので、その文間を読み手が埋めていかなければならない。そのうち、なんとなく舞台と登場人物の輪郭が整ってくる。そこからは面白みが一気に加速、疾走感に飛んだ物語に没頭してしまう。 主人公はイタリアの石工、彼の人物形成に辿り着くまでが時間がかかる。そして彼と共に生きる名家の令嬢、こちらはわりと取っつきやすい。二人が織りなす劇的な人生模様を近代イタリヤの歴史的変遷にうまく織り込んだ良質な娯楽作品となっている。

「彼女を見守る」ジャン・バティスト・アンドレア 著 ★★★★早川書房

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