「ロードサイド・クロス」 ジェフリー・ディーヴァー 著 ★★★ 文藝春秋

投稿日時 2011-3-26 18:15:36 | トピック: 本棚

今度の題材は“ブログ”、そして活躍するのはキネシクス捜査官のキャサリン・ダンス。毎回斬新な切り口で楽しませてくれる作者。その中でも、前作の“データ・マイニング”をテーマとした作品は秀逸であった。はたして、最新作の本書はいかに。
ブログの記事とそこへのコメントが犯罪を引き起こす、という設定。今風で、ありそうな話だが、ジェフリー・ディーヴァーが描くと真実味を帯びてくる。ネット上の記事と状況証拠から、一人の少年が浮かび上がる。しかし、ダンスも読者も絶対にそうであるという確信がないままに、彼は追い詰められていていく。このままでは終わらないだろう、この先どう話を運んでいくのか、その興味が先にたつ。そこで持ち出してきたのが、ネット上のゲーム。少年がヴァーチャルなゲームの中で操るアバターから、少年の無実をダンスは確信する。一見安直な設定に思えるかもしれないが、現実とヴァーチャルな空間を行き来する少年の描写が秀逸で、違和感のないダンスの推理が成立している。本書で読み応えのあるのはその部分で、物語的に仕組まれている犯人探しのいくつかのどんでん返しは付録にしかすぎない。ある意味、ネットと小説を融合させた欲張りな野新作と言えるかもしれない。



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