「バーニング・ワイヤー」ジェフリー・ディーヴァー 著 ★★★★ 文藝春秋

投稿日時 2012-12-1 19:11:26 | トピック: 本棚

最近のジェフリー・ディーヴァーの作品は、人々の関心が、今、何に向いているか、我々の生活の身近なところに着目し、それらがもたらす恩恵とその裏側にある危うさをテーマとしている。

「ソウルコレクター」では“データマイニング”を主題として、身の廻りのあらゆる情報がデジタルデータ化されている現代社会の裏に潜む悪をあばいてみせた。そして、今回のテーマは“エネルギー問題”。今ではそれに必ず付いてまわる代名詞“代替エネルギー問題”の“仕掛け”をちらつかせている。今まさに旬の作品といえよう。

物語の中盤で犯人が特定され、捜査はたたみかけるようなスピードで犯人に迫る。だが、しかし、リンカーン・ライムの読者なら、このままで終わるはずがないことを知っている。これから、どうやって読者を楽しませてくれるのか、どんな展開がまっているのか、それを期待しながら読み進む。これもまた、リンカーン・ライムシリーズのお定まりとなっている。

本作品がこれまでの作品と若干違うのは、捜査終了後の余韻をうまく描いている点だ。事件とは直接関わり合いのない何気ない挿話が最後の最後にきて生きてくる。事件の決着後にくるもう一つの物語。それをうまく仕組んだジェフリー・ディーヴァーはさすがだ。シリーズはまだまだ経年劣化していない、次回も楽しみだ。



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