大熊谷西山稜1260まで 2014/2/12

投稿日時 2014-2-13 18:41:54 | トピック: 山旅





















昨年の暮れから踏査を始めた大熊谷西山稜。今季としては三度目となる山行。
先週末関東方面は記録的な積雪となったが、富山でもそれなりの降雪があったようだ。伊折には県外ナンバーの軽トラが一台止まっていた。意外にも、その車の持ち主のものか、あるいは降雪後訪れた別の登山者のものか、馬場島への道にはトレースが残されていた。人数は二人か三人。その跡を辿って今日の目的地へと向かう。気温はマイナス7度。手袋三枚重ねでも、血行不良の自分の手は冷たくなかなかあったかくならない。剱センターを通過するころになって、ようやく指先にも血が回ってきたようだ。

前回利用した剱センターを過ぎてすぐの小沢の左岸から取り付く。杉の造林帯のため降雪直後でも雪がいくらか締まっていて、少しは歩きやすい。そしてこの造林帯、820まで続くのだから利用しない手はないだろう。杉木立の合間から剱岳が見え隠れするのを楽しんでいるうちに、自然に高度があがって行く。本来の大熊谷を挟んですぐの支尾根を下から忠実に辿ると、積雪が少ないときには藪尾根でかなり難渋する。東山稜も同様で1000まで標高を上げないと今冬のような寡雪のときは大変だろう。

820の大地にある三本の立山杉は圧巻、そこから眺める剱もまた最高。そこから左の細尾根を辿って本来の大熊谷西山稜に取り付く。ここからは新雪、深雪地獄が待っていた。しばらく雪が降っていなかったとみえて、踏み込むとひざ下ザラメ雪の層までスノーシューが沈む。急傾斜でずり落ちそうなのをだましだまし進む。ときには太ももまで、ときには顔のすぐ前の新雪をかき分けて、三度抑えのラッセル。急な痩せ尾根と緩傾斜の尾根が交互に現れてルート的には飽きが来ない。この間、ずーっと左手には剱から北方稜線が見えている。後ろを振り向くと東芦見尾根の山々。「剱見るなら赤谷尾根でよ〜」という唄があるが、そこから見る荒々しい剱もいいが、この尾根から見渡す剱から連なる山々の眺めもまた格別なものがある。

前回引き返した1150地点まで順調に到達。ここからの出だしの急登がきつかった。一登りで1300まで行けるのではないかとの思いはすぐに吹き飛んだ。新雪の量が一気に増して、潜るは潜るは、滑りに滑る。電光を小刻みに刻んでもかなり厳しい。そのうち心臓がバクバクしてくるし、ここでスイッチが入ってはまずいと思い、心拍数を上げないようにゆっくりゆっくり休み休みしながら、少しずつ高度を稼ぐ。こうなったら、山を楽しむどころではなくなってくる、一旦心臓暴走のスイッチが働いたらそこで終わりだ。そうならないように、後味の悪い結果とならないように、それが喫緊の課題となった。それを意識しながらなんとか悪場を過ぎると傾斜の緩い台地に出た。陽射しは春を思わせるほどの強さ。サングラスなしでは目を開けていられないくらい。ここにもデカイ立山杉が鎮座ましている。その立山杉がエネルギーをくれたのか、心臓の状態は落ち着いていった。

そして、この大地からの最大の恵みは、大熊山を左に見てそこから右に連なる西山稜の奥に見えてきた大日岳の雄姿だった。西山稜の主稜線に立てばこれが見られるとの想い、その一念で登り続けてきた苦労が報われた。ここから臨む大日岳はとりわけ美しく見える。荒々しい下部が手前にある西山稜のおかげで隠れているため、頂稜部のたおやかな姿しか見えないためだ。振り向けば毛勝山塊の雄、釜谷山がピラミダスな頭を出している。もちろん、剱から北方稜線の眺めは言うまでもない。

その天国とも思える大地からさらに進んで緩やかな山稜を1340ピークまで足しを延ばそうと歩き始めた。だが、標高差80、この深雪ではあと一時間はかかるだろう、気分の良いところで今日の行動を打ち切った。

下りの新雪浮遊は今季最高であった。

伊折から取り付きまで 1時間10分
1260まで 3時間40分
下り取り付きまで 1時間30分
伊折まで 1時間10分


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