本棚 : 「少年と犬」馳星周 著 ★★★ 文藝春秋
投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-2-23 17:58:46 (123 ヒット)

このところ、「ノワール」から遠ざかり、すっかり変化してしまった馳星周。
この作品もその一冊。一匹の犬が、東北から九州へと飼い主を替えながら辿る数奇な運命。そして、最後の最後まで予想もつかない物語と結末。先の見えない展開にぐいぐい引き込まれていった。

「ノワール」の頃は、これでもかこれでもかという書き込みと筆圧に圧倒された感があるが、本作品ではそれとは真逆の筆遣いがみられる。つまり、できるだけそぎ落としたスリムな文体と文章。比べるのもなんなのだが、ちょっと前に読んだ冲方丁の「アクティベイター」の対極に位置する作風だ。「語らずして語る」とでもいうのだろうか、それは絵でいうところの「描かずして描く」、木彫でいえば「彫らずに彫る」という境地。
直木賞を獲ったのも頷ける。

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