本棚 : 「リンカーンとさまよえる霊魂たち」 ジョージ・ソーンダーズ 著 ‎★★★ 河出書房新社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2021-8-18 14:50:58 (127 ヒット)

出だしはやや読みづらい。劇中のセリフのようでもあり、詩の朗読のようでもある。読み進むにつれてこれらが霊魂たちの会話であることが分かってくる。どうやら、南北戦争中に11歳で亡くなったリンカーンの三男のウイリーの霊を成仏させたいと、墓場に集まって来てガヤガヤやっている、らしい。その会話から南北戦争の様子が垣間見られ、リンカーンの人なりもやんわりと描き出されている。

ウイリーはとても聡明で頭もよく気質も穏やかで、リンカーン夫妻はとてもウイリーのことを愛していたらしい。それだけに、リンカーンの落胆ぶりも激しい。集まってきた霊魂たちは、ウイリーの霊をリンカーンの内に入り込ませ、リンカーンに最後の別れを決意させようとする。なにしろ南北戦争はまだ続いており、リンカーンは悲しみに浸ってばかりはいられないのだ。霊魂たちの視点から見た南北戦争とリンカーン、そしてリンカーン坊やの死、というのが本作品の主題である。

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