本棚 : 「僕の違和感」オルハン・パムク 著 ★★★★ 早川書房
投稿者: hangontan 投稿日時: 2022-12-14 10:39:33 (77 ヒット)

オルハン・パムク、四冊目。今回の主人公は呼び売り商人。「ボザ」というトウモロコシから作ったトルコの伝統的発酵飲料を、天秤棒を肩にかけ、「ボーザー、ボーザー」と呼び声を発しながら、イスタンブルの街を練り歩く。
主人公、その親、そして子供達、そして親類縁者にまつわる物語。1950年代から数十年間、世界のどの国もそうであるように、トルコもの激動の時代を迎えた。そして、ギリシャローマ時代から西欧とアジアとを繋ぐ要衝でもあったスタンブルも急激な発展と変貌を遂げる。

イスタンブルの変容は、極端な西欧化は伝統的文化の軽視と排除をもたらす、そして伝統的なもの、失われたものへの「ヒジュン(憂愁)」、これはこれまでに読んだ作者の作品を通して描かれた不変のテーマでもある、ボザ売りの主人公にも大きな影響を及ぼす。彼自身の数奇な恋愛体験とイスタンブルの変容がうまいぐあいに交錯し合って、作者独特のトルコ社会を映し出している。
また主人公の「呼び売り商人」への想いは私の商売「越中富山の薬売り」にも通ずるところが多々あって、変貌を遂げていく世の中で一つの業を続けていく姿勢に共感を覚えたのも事実である。

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