本棚 : 「スウェーデン・ブーツ」ヘニング・マンケル 著 ★★★★★ 東京創元社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2023-6-6 17:30:03 (39 ヒット)

設定は先に読んだ「イタリアン・シューズ」の10年後となっている。前作ほど主人公と彼を取り巻く連中の特異さに驚かされないが、本作品はちょっとしたミステリー仕立てとなっている。

しかし、ミステリーの謎解きよりも、主人公の内面描写に強く惹かれるものがある。この作品を書いたときの作者、主人公、そして読んでいる自分の年齢が近いことがそうさせているのだと思う。描かれているのは「老化」、人間として避けることのできないこのことにどう向き合うか、そのことがこの物語のテーマ。今、自分のこの歳でこの作品を手にしたのは、偶然とはいえ何かしら意味のある事のように思えてくる。20代、30代の人が読んでもこの心持に同調するのは無理ではないだろうか。彼らはこの作品をどう読み、どう感じるのか、とても気になるところではある。

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