本棚 : 「少女、女、ほか」バーナディン・エヴァリスト 著 ★★★ 白水社
投稿者: hangontan 投稿日時: 2023-11-15 16:34:29 (30 ヒット)

白水社と言えば、登山者のバイブル「日本登山体系」の出版元。登山を始めたころ、「山渓」や「岳人」という月刊誌もあったが、情報源としての信頼性とバックボーンとしての地位は揺るぎないものがあった。白水社からまず受けるのはそんなイメージ。

それはさておき、本書は様々な背景を持つ英国黒人女性たちの生きざまというか闘いを描いてみせている。何との闘いかというと、それは性差別であったり、肌の色であったり、人種的問題、国籍、幼少期のトラウマ、家族問題、トランスジェンダーとしての苦悩であったりもする。だが、ここに登場してくる女性たちはとても強く、困難に正面から立ち向かっていく。そして、それぞれの勝利の形となって生き抜いていく。それらが、実は大変なことなのに、ウイットに富んだ文体で、さも何でもないことのように淡々と描かれている。それが、読んでいて小気味よい気持ちにさせてくれる。人生楽しんでなんぼだ、また、自分の知らない世界へと誘ってくれたという点からみても、とても面白かった。
それにしてもこの本の値段は4500円、ものすごく高い。いったいどんな人が買うんだろうか。

印刷用ページ このニュースを友達に送る