本棚 : 「リンカーン・ハイウェイ」 エイモア・トールズ 著 ★★★★★ 早川書房
投稿者: hangontan 投稿日時: 2024-3-26 15:56:55 (7 ヒット)

1954年、少年達の冒険物語。終盤にきて、表紙絵が作品の内容をうまく表していて納得。こういうのに出会うと、うれしくなる。
主人公の兄弟二人が「リンカーン・ハイウェイ」を辿ってカリフォルニアの母親とを目指すというのが主題なのだが、脇役の物語もほぼ同等に描かれている。いってみれば、作品中のワン・チームといったところ。いくつもの挿話を巡っていると、彼らの一つ一つの物語に集中してしまい、旅の目的が脇にやられているようにさえ感じてしまう。だが、それぞれの挿話なくしてこの作品の味は生まれず、これは前に読んだ「モスクワの伯爵」と同じ枠組みといえる。
さらに。物語にはいくつかのキーワードがあって、「イン・メデイアス・レス」「スチュード・ベーカー」「アバーナシー教授による冒険譚の要約」「クノセス」など、それらを読み込み自分の中で消化していくのもまた楽しみの一つとなった。
全体的な印象としては、「モスクワの伯爵」が「大人の童話」ならば、本作品は子供に夢を託した「大人のファンタジー」といえる。

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