本棚 : 「地下鉄道」コルソン・ホワイトヘッド 著 ★★★★★ 早川書房
投稿者: hangontan 投稿日時: 2024-3-26 17:51:19 (7 ヒット)

強烈なパンチをくらった作品だ。
物語はジェットコースターのように進んでいき、一瞬の瞬きも許さないスピード感が作品全体を包む。根底に流れているのは黒人たちにとっては暗黒の時代。「地下鉄道」を使って、黒人奴隷が「自由黒人」を夢見て所有者から逃げていくという設定。

初めは「地下鉄道」は黒人の逃亡を促す組織の符丁かと思ったが、作品中では映画「大脱走」で描かれたような手掘りのリアル地下鉄道だった。トロッコのような地下鉄が来るまでかくまってくれる駅長も出てきて、ある意味ファンタジーの要素も感じられる。「地下鉄道」を使った逃亡は黒人奴隷の受難、暴力、理不尽からの脱却を意味し、自由へのあくなき渇望の象徴といえる。「ひどい時代」を描いた文句なしの秀作だ。

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